今回は、地方議員の代表性について考えてみる。
日本の地方自治は、住民から選挙で選ばれた首長と議会が相互に牽制しながら適切な権限行使、民意を反映した政治・行政を実現することを理念とする二元代表制がとられている。ともに民主主義的正統性をもつものである。
国会議員でも、地方議員でも、国民、地域住民を代表する存在である。この“代表する”とはどのようなことなのか。
選挙によって代表を選ぶという代表制の採用は、直接民主制の抱える難問、すなわち物理的にすべての住民が参加して政治を行うということができないという問題を解決した。しかし、住民によって選ばれた代表者ではあるが、彼らが住民の意思をどこまで代表することはできるのか、という新たな問題を生み出したのである。
そもそも、代表がもつ限界は以下のように指摘されている。
- 物理的な距離と心象的な距離がもたらす「疎隔感」
- 時間の経過とともに新たな争点が顕在化してくるという「争点の変化」
- 争点ごとに代表がなされているわけではないという「争点の非代表性」
- 代表される集団の内部には必ず意見の違いがあるという「意見の複数性」
このような限界をもつ代表制ついて、杉田(2006,p.4)は「理論的には不可能性を帯びているが、実践的に必要とされているがゆえに、存続している」と述べている。
昨今の議会の形骸化や議会に対する不信感は、代表制に内在する限界に対して議会がそれを克服しようとする姿勢や工夫が不足していることが原因だと考えられる。地方議員は、代表性には限界があり、不完全な制度であるということを認識したうえで、有権者との関係構築に努力する姿勢が求められる。
参考文献
杉田敦(2006)「自治体と代表制―競争としての代表=表象」自治体学会編『自治体における代表制』年報自治体学19.