地方選挙における無党派層と浮動票を考える
今回は、地方選挙における無党派層と浮動票を考えてみる。
一般的に、無党派層とは特定の支持政党を持たない、または明確に決めていない有権者のことである。他方、浮動票は固定票に対する言葉であり、非組織票という側面をもつものであり、候補者がなんとか取り込みたいと考えている人たちの票である。以前は、無党派層の票≒浮動票と考えられていたが、最近の国政選挙においては、支持政党があるにもかかわらず、そのときの風によって政党や候補者を選ぶという傾向があるといわれている。2005年の郵政解散、2009年の民主党政権、2012年の自民大勝など、国政選挙の候補者は非常に票を読みにくい状況にあるようだ。
それでは、地方選挙においては、無党派層と浮動票をどのように考えればよいのであろうか。そもそも地方選挙において、選挙結果に影響を与えるような浮動票が存在しているのであろうか。
こちらの記事(「地方議会の投票率の推移(東京都版)」)で掲載した投票率の推移をみると、平成20年頃においては約20ポイントの差を最大として、その他の年も国政選挙と地方選挙には投票率の大きな差がある。
東京都における衆議院議員選挙と市区町村議員選挙の投票率推移
この差は、“国政選挙には行くが、地方選挙には行かない”という有権者が常に一定数以上いることを示している。つまり、地方選挙においては、国政選挙と比較すると浮動票は少ないと推測できる。
国政選挙の候補者は浮動票が当落を左右しかねないほど大きな影響を及ぼすが、地方選挙においてはそもそも浮動票がそれほど大きなウェイトを占めておらず(必ず投票する人の票が大部分を占める)、候補者の当落にどれほどの影響を与えるかはわからない。
地方選挙の全票数のうちの多くは、必ず投票に行くという人たち(相対的に投票率が高い60代以上の世代)による票が多くの割合を占めている。また、60代以上の世代の票は、固定的な性格をもつ票となっていると考えられる。これは、高齢者のしがらみや長い付き合いなどがその背景にあることから容易に想像できる。つまり、地方議会は劇的な変化がおきづらい状況にあるといえる。
ただし、これは投票率が現在のように低い状態が続くということが前提とする場合である。地方選挙において投票率が国政選挙なみになったとしたら(=大量の浮動票が地方選挙に投入されたとしたら)、地方議会に劇的な変化が起きる可能性があるということでもある。その意味では、地方選挙は、有権者から見れば、国政選挙とは異なり、自分の票が政治行政に影響を与えることを実感できる機会といえる。