議員・議会評価の動き
学術的な研究における評価
小林(2005,p.41)は、「議員を選ぶのではなく、つくり育てていくべき」という趣旨のもと、議員評価の基準について、議場・議会内の活動に関するものとして、(1)本会議・委員会への出席回数(出席比率)、(2)本会議における発言・一般質問(回数)、(3)議員提案や議案の修正(各回数)、(4)公約の質・内容・達成度、(5)住民の自治や議会改革への取組み、(6)重要条例等の案件に対する賛否とその理由、(7)政務調査費の使途の公開の7項目を、そして、議会外活動として、(1)自己の活動報告や議会・自治体等に関する情報提供の程度(議会活動報告)、(2)市民との対話によるニーズの吸い上げ、(3)議会外のネットワークづくり、地方自治体に対する貢献、(4)地域問題の解決やまちづくりへの貢献度、(5)選挙のやり方の5項目を評価基準として提示した。また、山崎(2003)は、評価基準として、(1)人間性、(2)歴史意識、(3)先導的役割、(4)政策集団、(5)選挙公約、(6)対地域住民、(7)対首長、(8)対外姿勢、(9)演説の才能、(10)後世への遺産の10の評価項目を提示している。
市民活動における評価
このような学術的な視点からの評価のほかに、昨今では市民活動による議会・議員評価が行われ、その結果も公開されている。たとえば、「政策研究ネットワークなら・未来」は、(1)本会議における一般質問・代表質問の回数、(2)常任委員会における質疑等の回数、(3)本会議における欠席・遅刻・中途退席の状況の3項目を、「相模原市をよくする会」は、(1)基礎的能力、(2)行政チェック度、(3)公約達成度、(4)議会報告、(5)議会内態度姿勢、(6)政務調査活動、(7)人間性、(8)特性、(9)好感度の9項目を、さらに、「議会ウォッチャー・仙台」は、(1)会議場での議員の態度についての評価(離席、居眠り、私語)、(2)定例会の質問内容についての評価(現場調査、他都市との比較、改善案)を示し、結果を公表している。
これらの評価基準は、客観的に数値として測定することが可能な項目から、主観的は評価となる項目まで多様な項目がみられる。ただし、これらの評価基準は、(1)「客観的基準による評価」、(2)「客観的基準と主観的基準による評価」、(3)「主観的基準による評価」のいずれかに分類され、その組み合わせによって議員を評価しようとするものである。市民活動による評価においては、多くの住民に有用な情報となるように客観的な評価基準を採用しようとする努力がみられるが、必ずしも客観的な評価が実現できているとはいえない状況にある。どの評価項目を重視するかは、地域の実情に応じて評価主体が決定するものであり、どの組み合わせが最も適切かを一意に決定することは困難であろう。また、これまでの議会・議員評価の議論は評価の枠組みという視点からの議論が必ずしも十分とはいえない状況にある。
議員・議会評価の指標を検討する
議員・議会評価の指標作成は簡単なことではない。現在、各地で公開されている市民活動による評価指標も、地域の議員や政党から批判的な意見も少なくない。ただ、議員活動に関する情報が少ないなかで、限られた側面からにせよ議員や議会の評価情報が公開されることは意義があることである。
では、今後、議員・議会評価をどのように展開していけばよいのであろうか。もちろん、学術研究、市民活動による評価、議員による自主評価は継続されることが望ましい。これらの活動を継続しながら、議会が今後は議会が自らの評価をしてもらえるような情報を公開していくこと、議会広報の充実が重要なのではないだろうか。評価するに足るような十分な情報を議会自身が公開するということである。そうであれば、評価表法を市民のボランティア活動に全面的に依存するのではなく、市民それぞれが主観的な評価が期待できる。