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議会広報広聴 議会基本条例

議会基本条例における議会広報広聴規定の特徴

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東京都下の自治体議会における議会基本条例の制定率は周辺地域に比べて低くなっている(「議会基本条例の制定状況について」参照,2015年8月調査)。とくに23区においては荒川区議会と板橋区議会の2区だけが条例を制定しているだけで、23区全体の制定率は約9%と極端に低くなっている。荒川区と板橋区は議会基本条例を制定している点では、23区議会のなかでの先進的な議会ともいえる。しかし、条例の内容は先進的といえるのであろうか。そこで、荒川区と板橋区の条例規定を、議会改革のトップランナーといわれる先進自治体議会の条例と比較することによって、板橋区さらには先進自治体議会の議会基本条例の特徴を明らかにする。

1.荒川区・板橋区・栗山町、伊賀市、京丹後市、会津若松市の議会基本条例

(1)荒川区議会
荒川区議会基本条例における広報広聴は、「第3章 区民と議会の関係」の第6条~第8条に規定されている。以下、荒川区議会基本条例から引用である。

第3章 区民と議会の関係
(区民参加及び区民との連携)
第6条 議会は、広く区民の声を聴き、個々の議員の持てる力を生かし、区民福祉の向上に努めるものとする。
2 議会は、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)に規定する公聴会制度及び参考人制度を活用し、議会の審議に反映するよう努めるものとする。
3 議会は、請願又は陳情の審議に当たっては、請願者等の意見を聴く機会を設けることができる。
4 議会は、本会議及び委員会を原則として公開とする。
(区民に対する情報の公開)
第7条 議会は、議案に対する賛否について区民に公表する。
2 議会は、積極的に情報を提供することにより、区民が本会議及び委員会を傍聴できるよう努めるものとする。
(議会広報の充実)
第8条 議会は、区政に係る情報を議会の視点から、区民に提供するよう努めなければならない。
2 議会は、広報紙、インターネット等の多様な媒体を用いて、区民が議会に関心を持つよう広報活動に努めなければならない。

(2)板橋区議会

板橋区議会基本条例における広報広聴は、「第3章 区民と議会との関係」の第8条~第12条に規定されている。以下、板橋区議会基本条例からの引用である。

第3章 区民と議会との関係
(情報公開の推進)
第8条 議会は、情報公開を推進するため、次の各号に掲げる事項を実施するものとする。
⑴ 本会議及び委員会(特別委員会の理事会及び議会運営委員会の理事会を除く。)を公開すること。ただし、議決により秘密会とした場合を除く。
⑵ 議会が保有する文書等を東京都板橋区情報公開条例(平成12年板橋区条例第1号)に基づき適切に公開すること。
⑶ 議会及び議員の活動に対する区民の評価に資するよう、議案、決算報告、請願及び陳情(以下「議案等」という。)に対する各々の議員の態度を公表すること。
2 議会は、前項第1号及び第3号に掲げる事項の実施に当たっては、議会広報紙又は情報通信技術の発達を踏まえた多様な広報手段を活用するよう努めなければならない。
(議決責任)
第9条 議会は、議決責任を深く認識し、区民にとって最良となる意思決定をする責務を有する。
2 議会は、議案等を議決したときは、当該議決結果が区政に及ぼした効果又は影響を検証するよう努めなければならない。
(説明責任)
第10条 議会は、議案等を議決したときは、議決した内容及び議決に至るまでの議論の過程を区民に分かりやすく説明する責務を有する。
(多様な意見及び要望の把握)
第11条 議会は、請願及び陳情を区政に対する政策提案又は要望と位置付け、これに誠実に対応するとともに、その審査に当たっては、請願者又は陳情者による説明の機会を設けることができる。
2 議会は、本会議又は委員会の運営に当たっては、法第115条の2に規定する公聴会及び参考人の制度を積極的に活用するよう努めるものとする。
(議会報告会)
第12条 議会は、区民に議会活動の状況を直接に報告し、及び説明し、並びに区政に関する情報を提供するとともに、区民の意見及び要望を聴取することにより議会による政策立案及び政策提言の充実を図るため、特段の事情がある場合を除き、毎年1回以上、議会報告会を開催するものとする。
2 議会報告会に関し必要な事項は、別に定める。

次に、先進議会として北海道栗山町議会、三重県伊賀市議会、京都府京丹後市議会、福島県会津若松市議会の議会基本条例における広報広聴に関する規定を確認する。4つの議会基本条例における広報広聴に関する規定は以下のとおりである。

(3)栗山町議会基本条例からの引用

第3章 町民と議会の関係
(町民参加及び町民との連携)
第4条 議会は、議会の活動に関する情報公開を徹底するとともに、町民に対する説明責任を十分に果たさなければならない。
2 議会は、本会議のほか、常任委員会、特別委員会を原則公開するとともに、議会主催の一般会議を設置するなど、会期中又は閉会中を問わず、町民が議会の活動に参加できるような措置を講じるものとする。
3 議会は、常任委員会、特別委員会等の運営に当たり、参考人制度及び公聴会制度を十分に活用して、町民の専門的又は政策的識見等を議会の討議に反映させるものとする。
4 議会は、請願及び陳情を町民による政策提案と位置づけるとともに、その審議においては、これら提案者の意見を聴く機会を設けなければならない。
5 議会は、町民、町民団体、NPO等との意見交換の場を多様に設けて、議会及び議員の政策能力を強化するとともに、政策提案の拡大を図るものとする。
6 議会は、重要な議案に対する各議員の態度を議会広報で公表する等、議員の活動に対して町民の評価が的確になされるよう情報の提供に努めるものとする。
7 議会は、前6項の規定に関する実効性を高める方策として、全議員の出席のもとに町民に対する議会報告会を少なくとも年1回開催して、議会の説明責任を果たすとともに、これらの事項に関して町民の意見を聴取して議会運営の改善を図るものとする。

(4)伊賀市議会基本条例からの引用

第3章 市民と議会の関係
(市民参加及び市民との連携)
第6条 議会は、市民に対し積極的にその有する情報を発信し、説明責任を十分果たさなければならない。
2 議会は、本会議のほか、すべての会議を原則公開とする。
3 議会は、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第100条の2の規定による専門的知見の活用並びに本会議、常任委員会、議会運営委員会及び特別委員会(以下「委員会」という。)にあっては、法第109条第5項及び法第115条の2の規定による参考人制度及び公聴会制度を十分に活用して、市民の専門的又は政策的識見等を議会の討議に反映させるよう努めるものとする。
4 議会は、市民との意見交換の場を多様に設け、議員の政策立案能力を強化するとともに、政策提案の拡大を図るものとする。

(5)京丹後市議会基本条例からの引用

第2章 市民と議会の関係
(市民参加及び市民との連携)
第5条 議会は、本会議のほか、すべての会議を原則公開するとともに、市民に対し議会の活動に関する情報を積極的に公表して情報の共有を推進し、説明責任を果たすものとする。
2 議会は、会期中又は閉会中を問わず、市民との意見交換の場として懇談会等を開催し、市民の意見を反映させるよう努めるものとする。
3 議会は、常任委員会、議会運営委員会及び特別委員会(以下「委員会」という。)における参考人制度及び公聴会制度を活用して、市民の専門的又は政策的識見等を議会の討議に反映させるよう努めるものとする。
4 議会は、請願及び陳情を市民による政策提言と位置づけ、その審議において必要があると認める場合は、提案者の説明、意見を聴く機会を設けなければならない。
5 議会は、定例会閉会後に、議会で行われた議案等の審議の経過及び結果について市民に報告するとともに、市政全般に関する課題について意見交換を行うための議会報告会等を開催しなければならない。

(6)会津若松市議会基本条例からの引用

(市民と議会との関係)
第5条 議会は、市民に対し積極的にその有する情報を発信し、情報の共有を推進するとともに、説明責任を十分に果たさなければならない。
2 議会は、本会議、常任委員会のほか、すべての会議を原則公開とする。
3 議会は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第100条の2に規定する学識経験者等による専門的調査の活用並びに同法第109条第5項に規定する公聴会制度及び同条第6項に規定する参考人制度を活用して市民等の意見等を聴き、議会の政策形成に反映させるよう努めるものとする。
4 議会は、市民の多様な意見を把握し、反映しうる合議体としての特色を最大限に生かし、市民参加の推進に努めるとともに、市民との意見交換の場を多様に設けるものとする。

2.議会基本条例の特徴

上でみた条例の規定を政策プロセス(広報、広聴、討議、政策形成)のフェーズごと分類した。

区分 議会基本条例(先進自治体議会) 議会基本条例(板橋区議会)
広報 会議の原則公開
情報公開と説明責任の徹底
議員評価に足る情報提供(栗山町)
会議の原則公開
情報公開と説明責任の徹底
議決内容及び議論の過程の説明
広聴 請願者・陳情者からの意見を聴く場の設置
公聴会及び参考人制度の活用
意見交換の場の設置
議会報告会の開催
請願者・陳情者による説明の機会の設置
公聴会及び参考人制度の活用
議会報告会の開催
討議 討議に反映させる(栗山町)
討議に反映させるよう努める(伊賀市・京丹後市)
規定なし
政策 政策形成に反映させるよう努める(会津若松市) 規定なし

 

荒川区と板橋区の条例には、”情報の公開”、“説明責任”、”区民の意見を聴く”といった広報と広聴が議会による公式な活動として規定されている。ただし、荒川区の条例では広報の充実という原則の規定にとどまり具体性に欠けていることから、ここでは分析の対象からはずした。板橋区は議決責任と説明責任を明記して、議決した内容及び議決に至るまでの議論のプロセスを公開するとして具体的な内容を示している。また、広聴に関して公聴会制度・参考人制度の活用と請願者・陳情者の説明を直接聴く機会を活用するとともに、「議会報告会」の開催を義務規定にしている。

次に、この板橋区の条例規定と4つの先進議会の条例規定の比較を行った。広報が対象とする項目について規定しているか否かの違いはあるが、情報の提供する姿勢については板橋区も先進議会も大きな違いは見られない。広報に関しては、栗山町議会が市民に提供する情報の量と質を規定していることが特徴的である。提供する情報を個別的に例示するのではなく、その情報水準を示すという意味で画期的な規定であるともいえる。また、広聴に関しては、先進議会と板橋区議会との相違点は、議会報告会以外の多様な意見交換の場を設置するよう定められているという点である。これらの広報広聴に関しては、板橋区と先進議会には大きな違いはないが、「討議」「政策形成」のフェーズにおいては規定上、大きな違いがみられる。すなわり、先進議会においては、「討議」や「政策形成」に活用すると規定されているのに対して、板橋区にはそのような規定はない。つまり、先進議会は議会独自の政策形成を視野にいれた広聴活動を明記しているのである。この点は先進議会の条例の特徴であるといえる。

 

(つづく)

 

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